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投げっぱなし日記

イラストとか、自転車とか、まったりゆるゆる。

ちょっと渋峠行ってくる!(前編)

峠のススメ

ヤマノススメいいなあ…山に行きたいな~…。山に行って、星がみたいな~…。
天の川とかさ、見たいなあ。東京のなにが残念って、星が見えないことなのよね。
いつだったか長野の山の中の合宿で見た、満点の星空と天の川、もう一度見たいなあ…。そんでもって、写真に収めたりできれは最高だよね。

高いところに登れば見えるかな?
そうだ!渋峠に行こう!

草津温泉志賀高原の間にある白根山*1、その山頂のすこし先にあるのが渋峠。日本で一番高い場所を走る国道があり、「日本国道最高地点」の石碑を目指して数多の人が訪れる場所です。
真夜中なら、天の川をバックにあの石碑が撮れるはず…!
うん、なかなかいい構図じゃないですかね…!

そうと決まればさっそく準備!
星を撮るには、三脚にリモートレリーズ!夜中に歩き回れるように着替えと折りたたみシューズ…。
これを全部入れられるように、大きめのサドルバッグを新調しなくっちゃ…。
サドルバッグはリベレイトデザインならすぐに手にはいるかな~と思ったのだけれど、お店の人によると最近大きいサドルバッグが大人気で売り切れ入荷未定。這々の体を尽くして、ネット通販でなんとかそろえることができました。
いやしかし、この数日間でよく全部そろったものです。

宿は頂上、渋峠ホテル!天気を見極めるため、ギリギリまで待ってからの予約。
さあ、あとは行くだけ!

ナイトラン開始

今回の作戦は猛暑のさなかの200km自走。そこで8月2日(土)深夜に東京を発ち、夜間に群馬県渋川まで平地を北上、明けて8月3日(日)、日が昇って気温が上がらないうちに標高を上げ、日が暮れないうちに渋峠頂上に到着する、というもの。

忘れ物などあって、本格的にスタートする時間がかなりずれ込み、かなり遅めの出発になってしまいました。
まずは荒川サイクリングロードを目指します。
が、なにやら膝が痛い。うーん…ちょっと不安だなあ。無理のないペダリングでゆっくりペースを上げるようにして走っているうちに、だんだん痛みが取れてきました。よかった。

都市部は信号が多くて巡航速度が上がらないので、荒川サイクリングロードを遡上…と思ったのですが、暗い!虫が多い!
それらはまだ何とでもなるのですが、致命的だったのが、まず補給地点が少ないこと。この日は想像以上に暑く、深夜にもかかわらず30℃以上。みるみるうちに水がなくなってゆきます。いちいちコンビニを探して一般道に出るとなれば、あまり意味がない。
加えて道の分岐が複雑。サイクリングロードって、河川敷に降りる場所や、様々な施設に向かう道に細かく分岐があり、しかも地図上に表示がない。深夜なので肉眼でも道の先が確認できない。しばらく走ったら行き止まり、ということも一度や二度ならず。
おまけに草を噛んだのか、ブレーキがすさまじい音鳴りをし始め…これでは、これ以上サイクリングロードは走れないと判断。
プランBに変更です!
実は、こんなこともあろうかと、一般道ルートも考えてあったのでした。そうと決まればさっそく離脱!

しかし、慣れない内はちょっと夜のサイクリングロードは走りたくないなあ…と思わせる散々ぶりでした。

夜間行軍とおとも

サイクリングロードに別れを告げ、川越市を経由して、熊谷へ。3時30分…さすがに黙々と走るのも飽きてきます。
景色もそんなに代わり映えしないし…。
つまらないなあ…。と思っていると、後ろにルイガノのロードバイクが1台くっついてきます。おや…?バックパックスタイルでかなりの荷物をしょっているらしく、スピードこそ出ませんがぴったりくっついて離れません。気がついたらトレインになっています。
ちょっと気になってきました。
「こんにちは!どちらまで?」
「あ、こんにちは!長野に行ってみようと思ってて。」
どうやらこのルイガノさん、越谷を出発し、これから碓氷峠を越えて軽井沢を経由、松本まで行くつもりらしい。
信号で止まるたびに軽く話をしながら、20kmほど一緒に走りました。やっぱり、誰かと走るって楽しいなあ…。

でも、彼の行き先は榛名山の南側、碓氷峠。自分の行き先は北側、渋峠
途中でお別れです。
「今日は午後から雨の予報だから気をつけて!」
互いの無事を祈りつつ、引き続き朝日の中山道をゆくルイガノさんに手を振り、関越自動車道に沿って一路北へ。渋川を目指します。

▲北へ、まっすぐ北へ。

スピードが、出ない?

ここから渋川までは、ほんのわずかながらの微登り。でも、それにしても何だかスピードが出ない…。あれ…?
なんだろうこの感じ…ハンガーノックにも近いけど、お腹がすいたでもなし、そもそもさっき補給したばかり。
脚が…売り切れちゃった…のかな…?

太陽が昇り、だんだんと気温が上がって、おまけに向かい風も吹いてきました。
もうこれは意地を張っても仕方がない。ギアを思い切って落として、ゆっくりペースで進みます。
右手に見える見事な山…赤城山…!左手にはちょっと特徴的な山…あれは榛名山!いよいよ関東平野の北端です。

赤城山。山麓の雄大さにほれぼれします。

7時、渋川に到着。うーん、予定通りと言えば予定通りのペース…。脚が辛いのでちょっとゆっくり休みます。なにせここからはひたすら登り。正直もう脚が辛いのですが…登りは使う筋肉が別だから…何とかなる!たぶん!

▲こちらが榛名山渋峠はあの北側(右手)を行ったさらにその先。見た目にこの先の登りの高さと長さが思いやられる…。

標高を上げろ!

さあ、平坦はおしまい、登りです!渋川市は標高180m、まず目指すは標高600mの長野原草津口。とにかく早く標高を上げないと、暑さでまいってしまうのは目に見えています。さすがにスピードは出せませんが、川にそって崖沿いの道を走ります。
サイクリングロードを途中で抜けたことでコースが変更になったため、走行距離は次の地点までの目安として当てになりません。標高だけが頼りです。谷に沿って登っては降るを繰り返し、じわりじわりと標高を上げていきます。気温30℃…暑い…。


▲やっと着いた!長野原草津口!この駅、綺麗だけど、周囲は想像以上に何にもない!補給もままならない!

長野原草津口では、もうちょっとゆっくりする予定だったのですが、本当に何にもないので、先を急ぐことに…。まだ10時…もう少し標高を上げないと、気温はまだまだ上がりそう。

ここからは日本ロマンチック街道と名付けられた国道292号線。道の様子が少し変わります。斜度こそきつくありませんが、これまで登っては下ってを繰り返していた道が登り一本調子に。

…雨だ!しかも大粒!そんな!午後まで降らないんじゃなかったの!?

▲奇しくもここは六合の「小雨」という名前の地区。昔からよく降る土地なんでしょうか。
気温が下がるのはありがたいのですが、ちょっとこのタイミングで降られるのは想定外。どうしようもないので、急いで次の休憩場所「道の駅 六合(くに)」を目指します。



▲道の駅六合。どっと疲れた…。


ひ、酷い目に遭った…。Twitterを通じて教えてもらった情報では、なにやら雨雲がちょうどこの近辺だけ発達しているらしい。
この辺りはXRAINのXバンドMPレーダー圏外なので詳しいデータを見ることはできないし…。晴れていたと思ったら急変するこの天候…。

甘かった。認識が甘かった。
箱根峠の延長みたいに考えていたけど、違った。全然違った。

正直、認識を変えなくては、と思いました。
これは「渋峠に行く」んじゃないんだ。「白根山に登る」んだ。「峠」ではなく中央分水嶺*2のある内陸の「山岳」なんだ。観天望気を行い、風を見て、雨を読まなきゃいけないんだ。今は気温25℃だから良かったけど、頂上付近の気温で本格的に降られて濡れたまま風に吹かれたら…。

雲が切れ、日が出始めました。でもここは山、いつまた降り出すかもしれません。
十分に休んで、気持ちを引き締めて、再び登りはじめます。

国道の頂へ

標高800mの六合を越えると、坂は急激にその傾斜を増します。ダンシングしないと登れない箇所が増え、まさにヒルクライムという様相を呈してきます。一度雨が降ったせいか、気温は大きくは上がらず、20℃程度で走りやすいのが幸いです。
パラパラと雨が断続的に降り続きますが、これはもう仕方がないとあきらめて、ただ黙々と谷間を登り続けます。区間距離はわずか8kmですが、草津は標高1200m…六合との差は400m。そりゃあ斜度もきつくなるわけです。
まばらに人家のような物が見えだし、観光地らしくなってきました。草津についた!

草津


▲山麓の温泉街という感じ。こういう所は箱根と似ています。

すでにいっぱいいっぱいですが、ここから頂上まで行かなくては。体力的にはペースを落としていれば大丈夫。だけど…山頂に真っ黒な雲が見えるのですが…。
とにかく、ここで悩んでいても仕方ない。進めるだけ進んで、上手く雨をやり過ごそう。

早々に草津を後にして、いよいよ白根山へ。標高が1500mを越えると、急激に気温が下がりはじめました。周りの木々がだんだんとまばらになり始め、空が開けてゆき…同時に見えてくる山頂の闇、明らかな雷雲…。これ…逃げ場がない位置で降られたら、マズい…。そして軽く降り始めた雨を避け、飛び出すタイミングを狙うため、白根山ロープウェー山麓駅に。
どうやら森林限界が近づいている模様。景色に現実味がなくなってきました。そして、山頂の雲!

▲ロープウェー山麓駅。山頂は右手。なんなの、この白根山山頂付近の「ラスボスの城」感!!!


▲殺生河原は駅の脇にあるこの岩場の裏手らしく、ここまで硫黄の匂いが漂ってきます。


▲不穏な看板。「この先500メートル区間、硫化水素ガス発生地区につき道路上に立ち止まらないで通過してください。」


あんまり長居するわけにも行きません。あまり遅くなれば天気がさらに崩れる可能性は大なのです。雨の様子と、風向き、レーダーの情報…今なら行けるかな…?ウィンドブレーカーを着込み、意を決して再スタート。目指すは白根山頂上、その先にある日本国道最高地点。


▲所々にある天望台に止まりつつ、上へ上へ…。


▲道ばたには高山植物が咲き乱れ、眼下には草津温泉街…晴れていればさらに良い景色なんだろうなあ…。


▲そして…あの頂の向こう側が目的地なのか…。


▲この辺りは、5月に山が開かれた直後は雪壁が見られるらしいのですが、今はその面影はありません。


▲疲れでシャッタースピードがおかしくなっていることに気がついていないという。うぎぎ。

あと少し…もう少しで白根山の頂上だ…と休憩していると、ふわっと硫黄の香りが…。あれ?風向き的に山頂じゃなくて下界の方からなんだけど…こんな所で硫黄の香りなんてする…?ふと谷をのぞき込むと、ものすごい勢いで雲が上がってきます。雄大な景色…だなんて見とれている場合じゃない。もう下界が真っ白になっています。あの雲に巻き込まれたら視界が消える…!!!山頂へ!山頂のレストハウスへ!!

しかし…様子がおかしい…レストハウスの周りに鎖が…レストハウス、営業していない…?

白根山山頂付近は火山活動の活発化により駐停車禁止となっています」

な、なんだってー!
そう、この時、草津白根山は火山活動が活発化に伴い、噴火警戒レベルが2に引き上げられており、数日前から通行は可能になっていたものの、頂上付近は駐停車禁止になっていたのです。
でも…駐停車禁止って、つまり自転車の場合「足つき禁止」ってことじゃないですかー!!!!
もう、ここからは休憩ポイントは存在しません。走りきる以外の選択肢がない!

幸い、山頂を回り込むと雲はもう追ってきません。とにかく、一歩一歩進むだけです。なあに、途中山田峠で一度降ろうと、しょせんはあと200m登るだけ…その程度、もはや何ともないわ!…あー…なんか標高に対する感覚が麻痺してきたわー…。

ついた!!!!
ここが日本国道最高地点、標高2172m!
もう…もう…言葉が出ない…!


▲ガスで何も見えなかったら残念だなあ…と思っていたのですが、奇跡的に雲が切れました。何よりのご褒美でした。感無量ってこういう時に言うんでしょうね。


人が少なく、家族連れの車が1台。東京から来ました~というと、ずいぶんと驚いておられました。ええ、今さらながらに私も驚いています。お父さんがロード乗りのようでした。

ガスがまた出てきました。残りの力を振り絞って渋峠ホテルへ…。

▲展望台から近いうえ下りのため、あっけなく到着。なのに、わずか数分でこのガス。山怖い。


ここがちょうど群馬と長野の県境。そして今日の宿です。
チェックインを済ませて、お風呂につかって、夕食を戴いて、まだ夕方ですが、早々にふとんに倒れ込みました。

*1:白根山という名前の山は日光にもあるため、山関連の本だとそれぞれ草津白根山日光白根山と呼び慣わされるようです。今回の目的地は「草津白根山」です。

*2:中央分水嶺とは太平洋側と日本海側を分けるライン。白根山は山頂付近の山田峠に中央分水嶺が通っている。このライン上に位置する山岳は太平洋・日本海両岸の影響を受けるため、天候が急変しやすい。