投げっぱなし日記

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著作権の非親告罪化

こんなエントリーがあったので。ちょっととりとめもなく書く。
たけくまメモ:【著作権】とんでもない法案が審議されている

表向きは実に素晴らしい法案である

まあ要するに、海賊版などあからさまで悪質な著作権侵害に対して、著作権利者への同意を取らずに取り締まることを可能にして、より身軽に動けるようにしよう。コンテンツ産業を守ろう。そういった法案。根本的には。
実にいい法案ではないか。これで海賊版が無くなって日本の産業に貢献されるのならば。


というのは表向き。力には常に正しい使い方と間違った使い方が同居するわけで。というわけで裏の見方。どんなにいい法律も逆の見方からも検討しないと別な危険を生み出す。ブレーキがない車は暴走する。うがった見方もしておかないと、ザル法ができてからでは遅い。

本当に海賊版対策のためだけなの?という不安

どういう事か?もちろんこの法律が文字通り海賊版等のみに適用されているならいいでしょう。実に結構。しかし三者が独自の判断で踏み込めるという事は逆に言えば、これが乱用された日にゃ、二次創作ならば現在は見ないふりをしてもらっている分野も警察や著作権団体の判断でアウトになる可能性があるわけです。そうなれば二次創作なんて怖くてやってられない、となる可能性もある。
ようは、著作権団体がこれを「錦の御旗」とばかりに二次創作が弾圧されるようであればコンテンツ産業の種や若芽がことごとく摘み取られてしまう危険性をはらんでいる。
「大袈裟すぎるよ」という意見もあるでしょうが、前例がある以上見過ごすわけにはいかない。
かつてJASRACが台頭して、アレンジ系のMIDIサイトがほぼ絶滅状態まで追いやられたという経緯があるのですわ。あれを見ていた人間としては、再び殲滅戦が起こるという最悪の事態を頭に思い描かずにはいられない。


で、さらに、今出されている案には、著作権を厳しくしようという意見しかなく、乱用を止める方策についての議論が見当たらないわけですわ。適用範囲も凄く曖昧。読んでいる限りは本当に海賊版DVDだけに使うつもりなのか?と疑問を持たざるを得ない。はっきり言ってこれがこの方向性のまま通ったらかなり危険なにおいがする。
しかも、告訴可能な期限を長くするとかそういった段階を全部すっ飛ばして非親告罪化ときたもんだ。なぜそんなに非親告罪化を急ぐんだ?もっと別の方策が残されているにもかかわらず!ちょっとこの動きの背後に潜む意図に敏感にならざるを得ない。

個人的にはこう思う(ぼやき)

どんなプロでも、人間は模倣をしなければ学習できない。これは自分もそう思っています。絵でも音楽でも…本能に組み込まれている以外のありとあらゆる事は「学習」がなければ身に付かない。学習とはそのほとんどが先人の模倣です。そして創作とは膨大な学習の積み上げにひとさじの独自性を加えた物です。大樹の元に生える若木は次の世代の森。
俺だってここまで絵が描けるようになるために一体どれだけの人の絵を真似たことか。そしてこれからもっと絵がうまくなるためにどれだけの絵を模写することか。それが悪意ある第三者に「この構図はパクリだ」「この技法はパクリだ」と難癖をつけられてお縄頂戴となってはかなわない。
パロディーなんか許せない!オリジナルしか認めない!二次創作なんて糞喰らえ!と思っている人は、諸手を挙げて喜ぶところでしょう。その考えは否定しないけれど、行き過ぎたオリジナル偏重は下手をすると10年後20年後のオリジナルを壊滅させる行為であることを頭の片隅に置くようにして欲しい。

結論

確かに、海外版取り締まりという目的は素晴らしいのだが、その目的に対して非親告罪化という手段は度を超えている。別の目的での使用前提で議論されているように思えてならない。実際に運用する際の適用範囲がきちんと見えないまま話が進んでおり、このままの状態で通すのは危険。


著作権は文化の発展のためにある*1のに文化を圧し殺してどうするんだ。
もう少し慎重な議論をお願いしたい。

*1:第一章 総則>第一節 通則>(目的)第一条「この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。」

*2:ただ、うちは賛成派ではないんだけどなあ…。